40年以上前の書籍で経年劣化はありますが
書き込み切り抜きなし 読む分に問題ありません 現品限り
昭和五十一年十二月十日 初版発行
昭和五十二年五月十日 七版発行
使い分けに迷う同音同訓 の漢字と熟語の意味を明らかにして、正しい使い方を示した画期的な辞典
実用新案登録出願済
文章を書くすべての人の机辺に!
当用漢字・ 当用音訓・送り仮名 など、現代の 国語表記法 に則して書き表す場合に。
当用漢字 当用音訓 の範囲を超えて、
漢字 を 自在に駆使 して #表現 する場合にも。
432ページ
言うと 云う
井上ひさし
小説を書くとき、いつもぶつかる疑問がある。それは「⋯
・と彼は言った」が正しいか、「と彼は云った」でよいのか、という疑問である。どっちでも同じではないか、つまらぬことに引っかかっていないではやく次を書いてください、と編集者たちは口をそろえて言うが(これも問題だ。「云」かもしれない)、わたしは長いあいだ釈然とせずにいた。ところが、この辞典の見本刷はわたしの疑問をたちまちのうちに氷解させた。「云う」はくそれと同じ種類のものの一つであることを明らかにすること。日本と云う国家。田中さんと云う医者・・>、「言う」はく思っていることを言葉に表して出すこと。例物を言う。お礼を言う・・⋯〉と明記してあったのである。そこでわたしは「たいした辞典ができたものだ」とあえて言う(たしかにここは「云う」ではなく、「言う」と言わねばならぬ)。
漢字というのは、表意文字といわれているように、一字一字が意味を持っている。漢字を用いるには、それぞれの漢字の意味を重んじなければならない。これが、漢字の用法の基本である。その場合、漢字には同音の字が多く、それらを組み合わせた同音の語も多い。中には、「機」と「器」、「夏季」と「夏期」のように紛らわしいものもある。また、漢字には、「捜す」と「探す」、「引き伸ばす」と「引き延ばす」のように、同訓の語もある。これらを正しく使い分けるのが、漢字の用法である。
それにもかかわらず、国語辞典や漢和辞典は、これに満足な解答を与えてくれない。表記辞典や用字用語辞典も、現代表記に詳しく、旧表記を軽視している。そこで、問題となる漢字について旧表記の実情を明らかにし、それとの関連で現代表記を示したのがこの本である。