江戸を出て、京・大阪に旅する狂四郎に絶え間なくふりかかってくる剣難と女難――。脂粉の香りに包まれた柔肌を欲情に燃やす将軍家斉の娘高姫。柳生流剣法を使い、執拗に狂四郎を襲う公儀直参の御庭番たち。死地に立った時の虚無感の中で鋭く冴えわたる円月殺法……。 狂四郎をめぐる事件は、いよいよ凄絶と妖艶を加えるが、怜悧明晰な頭脳と卓絶した剣技で対峙する。 昭和31年「週刊新潮」の創刊とともに登場するや、大反響をまき起した著者の代表作である。