没後五十年。新たな読み直しに向けて、全著作をジャンル別・発表年代順に収録。各巻に同時代の回想や批評文を併収。また、新たに発見された草稿四篇とメモ、断片を第13巻に収録する。
01初期作品
『晩年』以前、即ち太宰治の筆名を用いる以前の、主として中学、高校時代に書かれた小説及び作文を網羅収録し、プレ太宰治の全貌を明らかにする。
02小説1
「私はこの短篇集一冊のために、十箇年を棒に振つた。まる十箇年、市民と同じさはやかな朝めしを食はなかつた。(中略)私はこの本一冊を創るためにのみ生まれた。」(「もの思ふ葦」)と自らが語る第一創作集『晩年』(昭和十一年六月刊)と、それにつづく〝苦悩の時期〟に書かれた「ダス・ゲマイネ」をはじめとした作品群を収める。
03小説2
パビナール中毒、入院、心中未遂、なお惑乱と絶望の時期はつづく。そして「創生記」「二十世紀旗手」「HUMAN LOST」が生まれる。しかし、転機がくる。昭和十三年、時に太宰治、三十歳。生への意欲が、文学への情熱が、太宰のなかに燃え上がる。名作「富嶽百景」「女生徒」が書かれ、書下し創作集『愛と美について』が生れる。
04小説3
十四年一月、結婚して甲府に新居を構えた太宰に、はじめて生活の安定と心の平和がおとずれる。その年九月、東京府下三鷹村に転居。「僕は、こんな男だから出世も出来ないし、お金持にもならない。けれども、この家一つは何とかして守つて行くつもりだ。」(「東京八景」)規則正しい執筆活動から次々と作品が生れた。
など