文庫です。 状態は並です。
遺産相続から女性の扱い方まで厳格に、でも驚くほど具体的に、イスラム社会を規定する『コーラン』。日本人には理解しにくいと言われるこの書も、アトーダ流に噛み砕けばすらすら頭に入ります。神の言葉『コーラン』は、実は後悔しない人生を送るための親父の説教みたいなものなんです。
イスラムとの協調が絶対不可欠な、今だからこそ読みたい『コーラン』の、一番易しい入門書。
目次
第1話 扉を開けると
第2話 象の年に生まれて
第3話 アラーは駱駝を創った
第4話 預言者たちが行く
第5話 妻を娶らば
〈コーランの構成一覧表〉
第6話 神は紙に描けない
第7話 砂漠のフェミニズム
第8話 救世者の称号
第9話 君去りし後
〈イスラム諸国会議機構(OIC)加盟国一覧〉
〈イスラム関係大小いろいろ大ざっぱ年表〉
第10話 聖典の故里を訪ねて
あとがき
解説 池内恵
本文より
二十一世紀の世界はイスラムとの協調を抜きにしては考えにくい。そのイスラムの根底にあるのがコーラン、と、これもまた論をまたない。
にもかかわらず私たち日本人はコーランをほとんど知らない。理解は極端に浅い。
このエッセイは日常の読書の中でコーランをやさしく読み知っていただくこと、ただそれだけを願って綴った。(「あとがき」)
本書「解説」より
コーランには全編を通したストーリーがない。全編どころか、各章にも明確な筋があることはほとんどない。数節単位でぶつぶつと切れてしまい、時間の流れも一方向でない。愛も恋も、人間的な情も主要な関心事ではない。あるのはひたすら神の一人称の命令である。(略)
(阿刀田さんは)腰を据えて勉強し、イスラム教の啓示の書の成り立ちから、マホメット(ムハンマド)の生涯、イスラム教団の歴史、基本的な教義の解説まで細やかに気を配って盛り込んだ、実によくできた入門書を仕上げてしまった。
――池内恵(国際日本文化研究センター助教授)
阿刀田高(あとうだ・たかし)
1935(昭和10)年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、1978年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。1979年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞、1995(平成7)年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。他に『ギリシア神話を知っていますか』『源氏物語を知っていますか』『知的創造の作法』『アンブラッセ』『地下水路の夜』など著書多数。