中古で入手したオーディオ機器や機械式カメラのメンテナンスやリペアを趣味で行っています。

1981年発売、ピュアセンダストヘッドとdbxノイズリダクションを搭載した第一世代K-1シリーズの最終型・ヤマハK-1dです。

楽器メーカーのヤマハらしい上品なデザインとガラス製カセットリッドなど上質な仕上げが素晴らしいモデルです。

K-1シリーズカセットデッキは初代K-1から始まってK-1a、K-1b、K-1d（K-1cはない）までが第一世代で、その後パネルデザインを刷新して3ヘッド&デュアルキャプスタンを採用した第二世代のK-1x、さらにK-1xのツイントランス版のK-1xwと続きます。

K-1dはオリジナルK-1シリーズの完成型と言えるモデルで、音元出版のオーディオアクセサリー誌で2ヘッド機ながらベストコンポ候補に選ばれたこともある実力モデルです。

電源を入れると内部からガーというモーター音はしますがテープ走行不能、早送り・巻戻しはリールが弱々しく回るのみで、テープをセットした状態ではまったく動きませんでした。

カセットメカを中心にした整備が必要です。

まずはベルト周りです。

ボンネットを開けてカセットメカを確認すると、案の定キャプスタンベルトがありません。加水分解で溶けてモータープーリーとフライホイールに絡みついています。

カセットデッキのベルトはメーカーによって溶けるメーカーと溶けないメーカーがあり、残念ながらヤマハは溶けるメーカーです。海苔の佃煮のようになったベルトをアルコールで拭き取って新品ベルトを装着しました。古いカセットデッキの修理でいちばん骨の折れる作業がこれです。溶けたベルトが知らないうちに指について、うっかり服など触ると取れないので、指を小まめにアルコールで拭きながら作業します。

テープカウンターを駆動するベルトは溶けていませんでしたが、伸びてゆるゆるになっていたので、こちらも新品ベルトに交換しました。

以上でテープが走行するようになりました。続いて早送り・巻戻しの修理です。

早送り・巻戻しはリールモーターの回転を首振り式のアイドラーアームによって左右のリールに振り分ける構造ですが、この首振りアームの動きが悪くなってアイドラーゴムも硬化してスリップしていました。

アイドラーアームはシリコングリスでスムーズに動くようにしました。アイドラーゴムは出来れば交換したいところですがサイズが特殊なため、ゴム軟化効果のあるクリーナーで表面処理してトルクUPを図りました。ハーフ精度の悪いテープや古いテープ以外は作動するようになりました。

この状態で半日ほどテープを再生し、速度が安定したところで315Hzの基準信号が録音されたテープで速度合わせを行いました。ラジカセやカセットデッキでベルトを交換した場合はテープ速度が変わるので、必ずこの方法で基準値に合わせる（戻す）作業が必要です。勘でやるなど論外です。

以上のメンテナンスによってすべてのテープ作動が可能になりました。録音もOKです。ノイズリダクションoff、ドルビーon、dbx onいずれも確認しました。どちらも問題ありません。やはりdbxの効果は凄いです。完全無音状態からいきなり音楽が立ち上がります。

カセットメカ整備時にフェイスパネルを外すので、すべての操作ボタンやツマミを外して分解クリーニングを行いました。

フェイスパネルはアルミの押し出し材、カセットリッドはガラス製と実に贅沢な作りです。ヤマハのメッキはたいへん優秀で表面の汚れや腐食が素地まで及ばないので、丁寧に磨くと新品のように綺麗になります。さすが楽器メーカーです。

原本から複製した取扱説明書と元箱が付属します。

元箱はこの個体がメーカー出荷された時のもので、本体のシリアルNo.06446と箱の番号6446が一致しています。内部の緩衝用発泡スチロールも残っています。画像の反対側面に宅配ラベルが貼られているのが残念です。当方から発送する時はこの上からプチプチで包みます。