既成の小説概念を破壊する、大胆で奔放な前衛的試みに溢れた「前期太宰」の作品群。
自ら「排除と反抗」「野望と献身のロマンスの地獄」と呼んだ時期にふさわしい、驚愕の一冊。
麻薬中毒と自殺未遂の地獄の日々、小市民のモラルと既成の小説概念のいっさいを否定し破壊せんとした前期作品集。“二十世紀旗手"という選ばれた自負と「生れて、すみません」という廃残意識に引き裂かれた現代人の心情をモザイク的構成のうちに定着させた表題作。文体の途中からの変更、助詞の極端な省略、文章の断片による構成、演説体・オペラ風・日記風などの文体の駆使、等々、手練手管の限りを尽くす。