部屋にたちこめるコーヒーの香りで、ランディは意識をとりもどした。ひとり旅の途中、旅費稼ぎのために滞在していた海辺の町で、知人に誘われてクルージングに出たが、彼らが麻薬の密売にかかわっていることに気づき、身の危険を感じて海に飛びこんだのだ。あとのことは、はっきり覚えていない…。部屋を見まわすと、背の高い男がコーヒーをマグについでいた。ネイビーブルーのTシャツに色あせたジーンズ。理性的でたくましい顔をしている。いったいこの人は誰なの?それになぜわたしは彼とここに?疑問に頭を悩ませながらも、ランディはときめく心を抑えることができなかった。