（ - 2006）洋画家、京都府生まれ、京都市立美術工芸大学西洋画科卒、1977年渡欧し、フランドル派絵画を学ぶ、浅井忠記念賞展、東京セントラル美術館油絵大賞展入選、スペイン・パドロン名誉市民、新制作・浅井忠展入、汎具象展特待、得意スペイン風景

藤田は京都府出身の洋画家で、京都市立美術工芸大学の西洋画科を卒業後、1977年に渡欧し、フランドル派絵画を学びました。スペインの風景を得意とし、その温かな光と影の対比や透明感のある空気感を独自の技法で描き出しました。

藤田西洋「セス―レスの微風」油彩 30号 大作 1989年作
本作品は、スペイン・ガリシア地方の小村セス―レスを描いた作品です。30号という大画面に広がる青空と穏やかな田園風景は、藤田が愛したスペインの自然と静かな村の情景を見事に表現しています。 画面の大部分を占める柔らかな青空は、微風が流れる静謐な時間を感じさせ、遠くに広がる雲の動きまでもが優しく描かれています。穏やかな川はゆっくりと流れ、そのほとりには停泊した小さなボートが、日常の静かな営みを物語っています。左側に並ぶ石造りの建物は、ガリシア地方の伝統的な風景を彷彿とさせ、歴史の積み重ねと自然との調和を感じさせる象徴的な存在です。

30号の大画面は、空間の広がりと奥行きをさらに強調し、観る者を作品の中へと引き込みます。広大な空、豊かな草原、そして遠くに霞む山並みが、まるで現地の風を感じさせるような臨場感を生み出しています。藤田西洋ならではの繊細な筆致と光の表現は、自然の美しさとその場の空気感を一層際立たせ、時間が止まったかのような穏やかで詩的な情景を描き出しています。本作品は、藤田西洋が得意としたスペイン風景画の中でも特に印象深い一枚であり、タイトルが示す通り、静かな風とともに流れる時間の美しさを見事に捉えた秀作です。