大手シンクタンクの三菱総合研究所が企画・編集した、時事用語の解説本。政治、経済、社会などのジャンル別に、見開き、もしくは1ページで1つのキーワードを解説する構成は、毎年出版されている類書と変わるところはない。ただ「経済・産業」のジャンルが比較的充実しているのが見てとれる。

   たとえば産業では、「新流通業態」「マイカルの倒産」「流通外資の日本進出」という流通業界の話題が続けて解説されている。外資系企業の日本進出は、他の業界においても幅広く検証されており、特に外資EMSの攻勢とメーカーの変革の動向は重点的に扱われている。ハイテク産業に限らず、日本の製造業全体にかかわるテーマとして押さえておきたいところだ。一方、「コア・コンピテンス/コンピテンシー」「サプライチェーンマネジメント」など企業経営の最先端を知るのに役立つキーワードも多い。

   もちろん、政治経済に関するトピックスだけではなく、「自然・環境」「情報・通信」「科学技術」などについても触れられている。これらは今後、比重が高まる分野であり、変化・進展の速さも期待できる。ここでまとめてチェックすると便利だろう。

   モノクロではあるが、グラフやマップ、写真、図表などがほとんどのページに掲載されており、資料としての利用価値は高い。コラムなどの息抜きはなく、「硬派」なキーワード集といった趣の1冊である。(棚上 勉)