女が因で浪人中の舟渡重三郎が、凌辱寸前の男女を救ったのは、木枯しすさぶ中山道でのことだった。夫の仇を追う七重と、義弟・俊之助。その夜の宿で、重三郎に肌を許した七重は、喘ぎの底から、仇討ちの助力を乞う。やがてある夜、重三郎は七重と俊之助の妖艶のからみあいを目撃した。しかも七重は見せつけてもいたのだ。そして三人は、仇の男と出くわすが…(「姦婦」)。時代小説集。