狂四郎に挑戦し、その高慢の鼻をみごとに打ち砕かれた高姫。彼女の指嗾(しそう)する覆面の男たちによって捕われの身となった病躯の狂四郎は、地下牢で公儀勝手方組頭の兵堂掃部(かもん)から奇怪な事件を耳にする。六十貫の輸入金のありかを記した二枚の薄い玻璃(はり)を眼にはめ込まれ、一夜のうちに盲目になった娘……。 江戸市中に連続して起る怪事件に巻き込まれ、妖気と殺気の中を疾駆する狂四郎であった――。 昭和31年「週刊新潮」の創刊とともに登場するや、大反響をまき起した著者の代表作である。